Amino acids, proteins (2014.10.9)

本年もアミノ酸・蛋白質を担当することになりました。

 

前半は、第2章「蛋白質の構成と構造」です。アミノ酸・蛋白質については、既におなじみの部分も多いかと思います。重要な事項・覚えるべき事項も多く、無味乾燥になりがちですが、そんな中で、病気とのつながりを念頭においた「薬学部」ならではの視点をもった講義にしたいと思います。講義中にでてくるシャペロン蛋白質については、参考書を紹介しましたので、機会があったら読んでみてください(こちら)。

後半では、第3章の「蛋白質とプロテオームの探求」の最初の方をやります。精製・アミノ酸配列の決定・抗体・質量分析(マススペクトロメトリー、通称マス)を取り上げます。近年の分析手法の進歩は著しいものがあり、講義として、最新のことをやるべきなのか、教科書的なところをやるべきなのか悩むところです。ここ半年程機器センターの担当をしていたこともあるので、今年は、質量分析のところを少し嵩増ししてみました。

ゲル濾過事始めが紹介されている(それ以外の話もある)笠井先生の本も参考書として紹介しています。上記と同じく参考図書に記載しました(こちら)。

 

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質問ありがとうございます。

 

*プロリンのヒドロシキ化により、どのような機構でコラーゲンのらせんが安定化するのか?という点は結論にいきつけませんでした。講義後のディスカッションで出たように、新しく水素結合が成立するためという説明はありそうなもので、事実、水を介してコラーゲンの鎖内や鎖間に水素結合が成立するという報告があります(Science 266:75-81(1994), Structure 3:893-906(1995))。一方、この見方に否定的な論文もあります(Nature 392:666-667(1998))。また水酸基の入る部位によってもヘリックスの安定性に与える影響は正負の両方があり得るようです。

少し調べただけではありますが、このような課題にも複数の見方があることがわかり、意外でした。

 

*小胞体でのポリペプチド鎖の折り畳みの完了がどのような分子機構で認識され得るか?という点も結論に行き着けませんでした。

 教室旅行中だった大先輩のY先生にうかがってみました。折り畳みが不完全だと通常露出されるはずのない疎水的な面が外に出るので、これを認識して折り畳みの「異常」を認識すること、この部分の近傍にグルコースを付加することは可能ではないかと推測されますが、結局、正常とされている折り畳みは「異常ではない」ことに過ぎないのかもしれない、とのお話でした。注目を浴びている研究課題でもあり、今後の進展が期待されます。

 

*βシートは講義中ではStryerの教科書にのっとり、βストランドによって構成される二次構造として紹介しました。このβストランドはその「面」がどのように展開するかによって、免疫グロブリンフォールド(←これは講義で出ました)、βバレル(←講義後にコメントをもらいました)、βプロペラ(←インテグリンに見られる構造。以前は免疫学・細胞生物学の講義で登場していました)など様々な名称の構造をとり得ます。なかなか奥が深い構造だと思います。